首には重要な神経が通っていて
首のケガは場合によっては命に関わります。
また首の構造はほかの場所(背中や腰)とは異なり
その構造から施術によっても
悪い影響を受けることがあります。
そこで今回は
首を施術するうえで注意するべきことについて紹介します。
首の構造
首には7個の骨(頚椎)があり
そのうち第1頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)は
他の頚椎とは大きく形が異なり
その役割にも違いがあります。
また頚椎にはほかの椎骨と違い
横突起に穴(横突孔)があり
そこには脳に血液を届ける椎骨動脈が通っています。
①環椎(Atlas)
環椎は大きな椎孔を持ち
その名の通りわっか状の形をしていて
椎骨の中で唯一椎体と棘突起を持たない椎骨です。
そのため環椎の上下(環椎後頭関節:OA、環軸関節:AA)には
椎骨間の衝撃を吸収するための椎間板がありません。
OAは主に首の前屈後屈の動きに関与していて
首全体の約50%の前屈後屈はこのOAで起こっています。
またOA付近には延髄の下端部があり
OA周辺のケガは延髄の損傷につながることもあるので
場合によっては命を落としてしまうこともあります。
②軸椎(Axis)
軸椎の特徴は
椎体から上に伸びた歯突起です。
歯突起の前面は環椎の椎孔の前部にある歯突起窩と関節を成し
首の回旋運動に関与していて
首全体の約50%の回旋運動を担っています。
首の治療//施術で気を付けるべきこと
首回りの施術を行う上で
一番注意を払わなくてはいけないのは
神経と血管の走行です。
先ほども紹介したように
OA付近には延髄の下端部があります。
そのためOA周辺の治療を行う際には
過度の前屈後屈(特に後屈)は避け
OAの矯正(HVLA)を行う場合には
年齢や基礎的な状態(骨密度やその他持病など)を
しっかりと把握し適切な判断をしたうえで行いましょう。
また軸椎の歯突起の骨折や
歯突起を固定している靭帯
(Alar ligament, transverse ligament, apical ligament)の損傷は
脊髄の狭窄や損傷の原因になるので
首の痛みや不安定感、上肢の神経症状などがある場合には
骨折やその周辺の靭帯損傷の有無を確認したうえで治療を行いましょう。
そして血管の走行にも着目する必要があります。
頚椎の横突孔を通る椎骨動脈の走行は
4つのパートに分かれます。
パート1:第7頚椎(隆椎)の横突孔に入るまで
パート2:軸椎の横突孔まで
パート3:環椎の横突孔まで
パート4:大後頭孔まで
そしてポイントとなるのはパート3~4にかけてです。
先ほども紹介したように
このパート3~4にあたるOAとAAでは
首の動きの約50%を担っています。
そのため首の動きによって
その周辺の組織には大きな牽引力が加わるので。
この部分でたるみを出すことで
血管が損傷しないようにしています。
しかし、そのたるみを越えた過度な回旋運動や
回旋した状態の長時間の維持は
血管への大きな負担となってしまい
脳へ血液供給を低下させたり
椎骨動脈の損傷の原因になります。
そして、このたるみのおかげで
首の回旋方向と同側の椎骨動脈にはゆとりができますが
反対側の椎骨動脈へは牽引力は軽減しているだけなので
例えば、首を右に回している場合には
右椎骨動脈にはゆとりができますが
左椎骨動脈には牽引力がかかっている状態になります。
この牽引力は
首の回旋の45度を超えると大きくなり
それに伴い血管が狭窄が生じます。
そのため首の回旋45度以上の状態では
脳への血液供給が低下が起こり
5D And 3Nの症状が出てきます。
※5D And 3N
5D:Drop attacks & loss of consciousness(意識障害)
Dizziness(めまい)
Dispopia(複視)
Dysarthria(構音障害)
Dysphasia(失語症)
A :Ataxia(運動失調)
3N:Nausea(吐き気)
Numbness(痺れ)
Nystagmus(眼振)
また年齢や血管の状態によっては
その牽引力により血管損傷が起こり
場合によっては命に関わることになります。
最後に
首の構造は椎骨そのものに加え
血管や神経などの位置や走行も複雑になっていて
その周囲のケガは
場合によっては何かしらの後遺症が残ってしまったり
最悪の場合命を落としてしまうことになります。
普段のライフスタイルや姿勢などによって
首の痛みやそれに関連して頭痛や肩こりなどの
症状に悩んでいる方は多くいるので
首周辺の治療を行う機会も多いと思います。
首周辺の施術を行う際には
その解剖学的特性を踏まえたうえで
患者さんの年齢や基礎疾患などの情報をしっかりと把握し
その人に適切な方法で施術を行いましょう。
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