今回は
HVLA(High-velocity, Low-amplitude)について紹介します。
HVLAって何?
HVLAは振幅の小さい動きを瞬発的に行うことで
関節の位置を正常の位置に戻すテクニックです。
知っていたり実際に受けたことのある方も多い
ポキポキ音が鳴る矯正もこのうちの1つです。
この”ポキッ”という音は
特に脊椎(背骨)に対してのHVLAでよくみられ
鳴っている方が効果があるように思いますが
音が鳴っていなくても
ちゃんと施術の効果は出ています。
HVLAの効果としては
①ズレている関節を正しい位置に戻す
②瞬発的な筋肉のストレッチによって筋肉が緩む
③上記の2つによって施術を行った部分の神経の流れを整える
の3つがあります。
多くの方が受けたことのあるHVLA(矯正)は
引っ張ったり捻じったりすることによるものが
ほとんどだと思いますが
部位や目的によってその方法はさまざまです。
<例えば>
・Wing-lift:胸部、胸腰椎移行部
・Leg tug:仙腸関節、股関節
・Whipping:手関節、足関節など
・Lumbar roll、sidebender:腰部
・Butterfly、cuddle:胸部
など
どんな時に使うの?
HVLAは関節の動きが良くない時に使われます。
関節の動きが悪くなる原因はさまざまですが
HVLAは関節が正常な位置からズレている時に使われます。
関節が正常な位置にないと、かみ合わせが悪くなり
関節を動かしにくくなったり
関節可動域が狭くなってしまいます。
そのため、HVLAを使うことで
関節を正常の位置に戻し
関節の動きを良くします。
また関節周囲の筋肉を弛緩させることで
関節がズレることを予防することができます。
そしてHVLAを利用する際に重要になってくるのが
それ行うタイミングです。
基本的にHVLAは”最終手段”として使われることが多いです。
関節の動きは多くの場合
METやBLT、Articulation/mobilizationを
利用することで改善されます。
また関節のズレは
筋肉バランスが崩れることで起こることが多いので
METなどでハリが生じている筋肉を緩めてあげることで
自然と改善されることもあります。
そのため
関節の動きが良くないからすぐにHVLAを行うのではなく
他の施術で改善が見られなかったから使うのがおススメです。
HVLAを使う時の注意点は?
HVLAは関節の位置がズレていたり
それに伴って関節の動きが悪くなっている場合に使われますが
HVLAを使う際には
それらが起こっている原因をしっかり把握する必要があります。
またHVLAはOMTの中でも
瞬発的にかかる力が大きい(強い)ので
施術を行う前には
禁忌(contraindication)を
しっかりと確認する必要があります。
<禁忌>
・変形性関節症(OA: osteoarthritis)
・リウマチ(RA: rhiumatoid arthritis)
・骨粗しょう症(OP: osteoprosis)
・骨折
・捻挫
・急性の椎間板ヘルニア
・妊娠(腰部のHVLA)
・関節が不安定
など
関節の不具合が
筋肉や靭帯のハリやコリによるものではなく
変形性関節症のように
関節そのものに異常がある場合は
HVLAを行うことで痛みなどの症状を悪化させてしまったり
靭帯損傷や骨折などのケガを引き起こしてしまうことがあるので
しっかりと確認を行ったうえで
HVLAを利用する必要があります。
また、首にHVLAを行う場合には
上記以外にも
5D And 3Nに気を付けないといけません。
<5D And 3N>
・Drop attacks(意識障害)
・Dizziness(めまい)
・Diplopia(複視)
・Dysarthria(構音障害)
・Dysphagia(失語症)
・Ataxia(運動障害)
・Nausia(吐き気)
・Numbness(痺れ)
・Nystagmus(眼振)
脳(頭)に血液を運んでいる血管(頚椎動脈)は
首の回旋の動きに弱く
過度な(繰り返しの)捻転運動や
長時間首を左右どちらかに回したままの状態は
脳への血液運搬の低下や
血管そのものを傷つけてしまうことがあります。
もし上記のような症状が出た場合は
直ちにHVLAを止めましょう。
また先ほども紹介しましたが
関節の動きはHVLA以外のテクニックで改善されることも多く
特に首は、HVLAが必要になるほど
HVLA以外のテクニックで改善がみられないことは少ないです。
上記の注意点以外にも
人によっては
HVLAを行った際の”ポキッ”という音が
苦手という方もいるので
施術の際にはしっかりと確認を取ったうえで行いましょう。
またHVLAを行った後は
関節が正常の位置に戻ったとはいえ
関節が短時間で
「いままでの位置と変わっている」状態になり
身体がそれに慣れるのに2~3日ほどかかります。
そのため
施術後はなるべく安静にして
身体に負担のかかる動きは避けることが大切です。
最後に
瞬発的に関節を正常な位置に戻すことができるHVLAは
一見便利ですごいテクニックのように思えますが
タイミングや使い方を間違えてしまうと
効果が得られなかったり
逆に症状の悪化やケガなどを引き起こす可能性もあるので
使用する際には
問診や治療前の検査などでしっかりと情報収集を
行ったうえで施術に移りましょう。
Comments